Hatena::Groupshoshigaku

試驗運轉中 このページをアンテナに追加 RSSフィード

0001-00-03集中

集中

| 集中 - 試驗運轉中 を含むブックマーク はてなブックマーク - 集中 - 試驗運轉中 集中 - 試驗運轉中 のブックマークコメント

collocationの圖書館學における譯語。「並置」とも(日本図書館学会用語辞典編集委員会編『図書館情報学用語辞典』丸善、1997.9)。この方が、com+location=一緒(一所)に位置すること、といふ原義に近く、「「隣接機能」とか、「一覧機能」とかのほうが漢語表現としてよっぽどふさわしい」*1 との意見もあるが、日本語では現状ほぼ「集中」しか使はれてゐない。

しばしば「集中機能」乃至「コロケーション機能」は識別機能乃至ファインディング・リスト機能と對立する文脈に置かれ*2、これを以てIFLAパリ原則第2章「目録の機能」を説明する論者もあるが*3、原文“Statement of principles adopted at the International Conference on Cataloguing Principles(Paris, 1961)自體にcollocationの語が使はれてゐたわけではなく、その後繼である「国際目録原則覚書(Statement of International Cataloguing Principles)」(2009)の「6. アクセスポイント」に現れるもそこでは「識別 identify」と對比する形にはなってゐず、そもそも仝「4. 目録の目的および機能」では五つの目的・機能の分立となってもはや二項對立でない。元來、目録の目的(objects)はカッターの『辭書體目録規則』(1876→1904第4版に三通りに分けて述べられてをり、後代これを概念化して論じ直す中で、特にその二番目の目的(與件に合致する所藏資料を示すこと)が一番目のと對照しつつ注目されてcollocationとかcollocatingとかいふ呼び方で概括されるやうになったらしい。集めるといふ意味ではgatheringがfinding機能と對置されることもあった*4

集中機能が未知文獻の檢索に關係づけられるのは、單に特定の既知文獻が有るかを探し出す所藏目録でしかないファインディング・リストと對比されるからである。關聯事項を集中併記してあればそこに既知以外のあれこれも入ってくる道理で、逆に未知な情報へ導くために手段として集中が用ゐられるわけ。しかしながら、チェック・リストのやうに目を通した既知資料ばかりを集中排列する場合もあらうことを考へてみれば、ヒューリスティックな效果は集中自體にとっては副産物なのではないか。また、未知への誘導に集中以外の手段が供されることもあらう。つまり、機能上の二分法とは必ずしも對應關係にないのに比例させられてをり、その所爲でこの概念自體の意義は曖昧になってしまった。

集中の内容としては、同一著者の諸著作、同一著作の諸版、特定主題の圖書を對象とすることが多い。つまり著者名、タイトル、件名を標目(アクセス・ポイント)として集中される。前掲『図書館情報学用語辞典』「並置 collocation」の項が「分類表中において」のものとしてのみ記述するのは、不當に限定し過ぎてゐよう。他方で件名による集中を例にして、同辭典が「分散関連事項 distributed relatives」の項を説明してゐる。即ち排列といふ形式上の問題として見れば、集中の對照項は「分散」であると見做せようし、機能面では一覽性の向上が相關する。同辭典「統一標目」の項における例解からも、「分散」對「集中」といふ圖式が看て取れる。早い例では、『新聞集成 明治編年史 第十五卷 全卷索引』(1936.11)の凡例*5 に「分散項目を集中式に」といふ見出しあり、一事項を別稱でも重出させて「分散」したので「彼此互に對應出來るやうに「……併看」の語を括弧内に注記して、主要題目への集中に便することにした」との方針が述べられてゐる。「併看」とは、所謂「をも見よ參照」(連結參照)の意。むしろ「を見よ參照」(直接參照)で統一標目に名寄せする方が併置排列となって「集中」と呼ぶに相應しからうが、件名目録の方法を索引に應用した所が興味深い。

集中標目の下で具現されることから、標目と記述といふ對比で捉へることもできよう。各圖書からただ忠實に轉記した書誌事項の記述と、その樣々な表現形に檢索や排列のための統制(コントロール)を加へた統一標目とは、實體としては往々重なって同一でも概念上は分けられる。前者における分散に對處するのが、後者の集中性となる。標目による集中を通して記述目録法的状態の中から主題目録法的な作用への遷移が生起してゐる、と見るも可か。目録法では集中機能は基本記入方式の下で重視されてきたが、森耕一らの批判により「標目と記述の分離」を旨とする記述獨立方式が採用されて以降、典據コントロールの問題として論じられるやうになってゐる。

別な面で一對をなすのは、集中性と排他性とである。機械的に集中すると、同名異人や同音異義や同語多義等によるノイズ情報が混入されがちなので、似て非なるもの・異なるものを區別し排除する排他性が集中性と裏腹に求められ、これに伴って標目の典據コントロールの重要性が増す。抽出は捨象と背中合せ、同定と識別とは楯の兩面、といふ意味での竝行的對立關係である。

なほ、「集中目録作業」(centralized cataloging)は別事に屬す。言語學用語のコロケーションは「連語」「共起」の譯語を持ち意味が異なる。

*1Cf. 『書物蔵』「図書館目録って何のためにあるの?」http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20090418/p1

*2:e.g. 宮田洋輔「日本の図書館目録における書誌的家系 : J-BISCにおける調査と先行研究との比較分析」『Library and information science』61、2009

*3:e.g. 渡邊隆弘「典拠コントロールの現状と将来」『情報の科学と技術』60卷9號、2010.9

*4:e.g. 北克一・芝勝徳「OPACにおける主題検索と典拠システム-主題検索システム・プロトタイプと利用者OPAC-」『現代の図書館』32卷2號、1994.6。鳥海恵司『音楽資料目録入門』「6.2. 目録の機能」<http://www.toccata.co.jp/cataloging/descriptive/mctk_int.html#_標目>。

*5中山泰昌編纂代表、財政經濟學會、「例言」p.2<http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1920455/5>

ゲスト



トラックバック - http://shoshigaku.g.hatena.ne.jp/livresque/00010003